発 明 入 門 講 座
〔2週間で知的財産権の基礎知識が身に付く〕
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


6日目
「産業財産権(工業所有権)の保護の対象は」

 産業財産権は、「特許法、実用新案法、意匠法、商標法」と、いう別々の法律で定められたものの総称です。

 それで、それぞれ、法律の内容は、
 @ 何が保護の対象になるか
 A どのような手続きで登録になるのか
 B 権利の内容はどういうものか
 と、いったことを定めています。
 たとえば、特許法では、産業上利用することができる発明を保護するもので、新規性や進歩性などがあれば登録になります(特許法第29条)。
 実用新案法の対象は、産業上利用することができる考案で、物品の形状、構造、または組み合わせに関するものにかぎられています(実用新案法第3条)。
 したがって、実用新案は、物品でない製造方法などは含まれません。製造方法は、特許の対象です。
 意匠法は、工業上、利用することができる意匠を保護するもので、物品の形状、模様、色彩、物品の外観で美感のあるものが対象です(意匠法第3条)。
 意匠は、新規性と創作性が要求されます。
 商標法は、商品や役務(サービス)に使用するマークで、文字、図形、記号、立体的形状など、他の人(第三者)の商品や役務と区別することができる顕著性を備えているものが対象です(商標法第3条)。
 商標は、特許、実用新案、意匠とことなり、有用なものを考えたということではなく、商品や役務を区別する目印になるマークが対象です。
 商標は、新規性がなくても権利は取れます。
 先願の発明について、ここで、もう少し説明を加えましょう。
 同一の発明が、まったく関係なしに、複数人によって出願されることもあります。
 このようなとき、誰に特許の権利を与えるかについて、つぎのように決めています。
 @ 同一の発明について、異なった日に2以上の特許出願があったときは、最先の特許出願人のみが特許を受けることができます。
 A 同一の発明について、同一の2以上の特許出願があったときは、特許出願人の協議により、定めた一の出願人のみが特許を受けることができます。
 このように、日本は、発明の完成が先か後か、ということは関係がなく、先に特許庁長官に届けた人に特許を与える、という先願主義を採用しているのです。


1日目  「産業財産権(工業所有権)とは何か」
2日目  「“発明”とは何か」
3日目  「先発明主義・先願主義・先使用権」
4日目  「同じ日に同じ内容の作品が出願されたら」
5日目  「産業財産権(工業所有権)と著作権との違いは」
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7日目  「ゲームの遊び方(ルール)は特許?」
8日目  「新規性・進歩性の意味は」
9日目  「先願(先行技術)調査が必要か」
10日目  「会社で考えた作品(職務発明)は」
11日目  「権利がおよぶのはどこまでか」
12日目  「実施権にはどんな種類があるのか」
13日目  「特許を出願をするときに、試作品も添付するのか」
14日目  「出願審査請求書は、いつ提出するのか」