発 明 入 門 講 座
〔2週間で知的財産権の基礎知識が身に付く〕
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


11日目
「権利がおよぶのはどこまでか」

 特許は、新しい作品を考えて、それを出願し、登録されると権利が発生します。
 ところが、この権利は、その物を生産すること、使用すること、展示すること、輸入すること、におよびます(特許法第2条)。
 また、特許は、その製法だけでなく、その方法で作った物を、販売したり、使用すること、も権利のうちにはいります。
 商標は、他の人(第三者)は、その商標を無断で使ってはいけません。
 したがって、小売店が「うちはメーカーから買って、ただ売っているだけです」と、いっても、それはとおらない、ということです。
 これも特許違反になるわけです。
 権利がおよばないのは、たとえば、試験や研究のために、その特許(発明)を使っても、それは権利侵害にはなりません(特許法第69条)。
 商標は、自分の名前とか、産地名を普通に使っているときは侵害になりません。
 また、発明者が出願する前から、すでに自分で作っていたとか、作る準備をしていた人は、先使用権(せんしようけん)といって、侵害にはなりません。
 しかし、そのときは使っていたという証明が必要です。ところが、その証明がむずかしいのです。だから、その事実を残しておくことが大切です。
 商標は、単に使っていたというだけではいけません。広く周知されていなければやはり侵害になっています。
 また他の人の権利により、作れないときもあります。すなわち、新しい作品というものは、従来の技術がもとになって生まれてくるものです。
 ところが、その従来の技術、すなわち、もとになる特許の権利が存続しているときが多いです。
 そうすると、その従来の技術を使わなければ自分の作品が実施できないときは、その先の権利者の承諾をえなければ、製品は作れません。
 したがって、特許の権利を取得したからといって、オールマイティでないことに留意すべきです。


1日目  「産業財産権(工業所有権)とは何か」
2日目  「“発明”とは何か」
3日目  「先発明主義・先願主義・先使用権」
4日目  「同じ日に同じ内容の作品が出願されたら」
5日目  「産業財産権(工業所有権)と著作権との違いは」
6日目  「産業財産権(工業所有権)の保護の対象は」
7日目  「ゲームの遊び方(ルール)は特許?」
8日目  「新規性・進歩性の意味は」
9日目  「先願(先行技術)調査が必要か」
10日目  「会社で考えた作品(職務発明)は」
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12日目  「実施権にはどんな種類があるのか」
13日目  「特許を出願をするときに、試作品も添付するのか」
14日目  「出願審査請求書は、いつ提出するのか」