発 明 入 門 講 座
〔2週間で知的財産権の基礎知識が身に付く〕
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


2日目
「“発明”とは何か」

 ところで“発明”とは、何ですか? 日頃から良く聞いている言葉だと思います。でも、多くの人がその意味について真剣に考えたことはないと思います。必要性がなかったからだと思います。
 それでは、さっそく、辞書でひいてみましょう。
 すると「いままでになかった、新しい作品を考え出すこと」と、書かれています。
 ついでに、特許法の条文もみてみましょう。
 「発明とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と、書かれています(特許法第2条)。
 たとえば、石に糸を付けて回転させます。
その石は、中心から遠ざかろうとします。
 このように石が外側へ向かおうとする力を“遠心力”といいます。
 これは、誰が、いつ、どこでやっても同じです。
 このことを“自然法則”といいます。
 この自然法則を、うまく利用して生まれたのが、遠心分離機(脱水機)の作品です。水にぬれた洗濯物を、金網の中に入れて、高速回転させると、洗濯物も水も中心から遠ざかろうとします。
 そして、洗濯物は、金網にさえぎられて止まります。ところが、水はこの網の孔から飛び出します。
その結果、洗濯物と水が分かれて脱水ができるわけです。
 ここで、もう少し、発明について、説明を加えてみましょう。
特許法は、発明の保護を対象とする法律です。
 では、発明とは、いったいどういうものでしょうか。
 発明は、技術的思想でなければならない、ということです。
 技術とは、一定の目的を達成するための合理的な手段をいいます。
 これには、一定の自然法則を利用することによって、一定の目的を反復継続して実現できることが必要です。
 発明は、技術的思想の創作でなければならない、ということです。
 その点で、単なる事物などを紹介する“発見”とは区別されています。
 発明は、技術的思想が自然法則を利用したものでなければならないのです。
 自然法則とは、自然界を支配する原理・原則をいい、感情、思考力などの精神的なものに対する概念です。
 発明は、技術的な創作であって、しかも高度であることが条件です。
 自然法則などというと、むずかしく聞こえてしまいます。ところが、小・中学校の理科の時間に学んだことは、みんな自然法則だったのです。
 たとえば、鏡が光を反射するとか、物を熱すると膨張するとか、磁石は鉄にすい付けられるとか……、そういったことです。
 私たちが日常使っている日用品や道具、機械などは、みんな自然の法則を利用した技術的な思想の創作ばかりです。

 (1) 発明の種類
 特許法上、発明を種類は、物の発明と方法の発明とに分けています。
 さらに方法の発明は、物の生産を伴う方法の発明と、物の生産を伴わない方法の発明とに分けています。
 物の発明の例としては、機械、器具、装置、医薬、化学物質などの発明です。
 物の生産に伴う方法の発明としては、医薬製造方法、食品の加工方法、栽培方法などがあります。
 物の生産を伴わない方法の発明としては、測定方法、分析方法、空気の浄化方法などがあります。

 (2) 発明でないもの
 発明でないものは、
 @ 永久運動
 A 欧文文字、数字、記号を適当に組み合わせて電報用の暗号を作成する方法
 B 電柱に広告をしたとき、大きな効果がえられるように、拘止具による吊るしての広告方法
 C 生命保険の方法
 D 玩具を使った遊びの方法
  ……、などがあります。


1日目  「産業財産権(工業所有権)とは何か」
  ↓   ↓   ↓   ↓   ↓   ↓
3日目  「先発明主義・先願主義・先使用権」
4日目  「同じ日に同じ内容の作品が出願されたら」
5日目  「産業財産権(工業所有権)と著作権との違いは」
6日目  「産業財産権(工業所有権)の保護の対象は」
7日目  「ゲームの遊び方(ルール)は特許?」
8日目  「新規性・進歩性の意味は」
9日目  「先願(先行技術)調査が必要か」
10日目  「会社で考えた作品(職務発明)は」
11日目  「権利がおよぶのはどこまでか」
12日目  「実施権にはどんな種類があるのか」
13日目  「特許を出願をするときに、試作品も添付するのか」
14日目  「出願審査請求書は、いつ提出するのか」