発 明 入 門 講 座
〔2週間で知的財産権の基礎知識が身に付く〕
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


10日目
「会社で考えた作品(職務発明)は」

 会社で考えた作品(職務発明)の権利がどうなるのか、サラリーマンにとって、とっても大事なことです。
 一般には「社員は月給をもらっているのです。だから、会社で新しい作品を考えたとき、その権利は会社のものです」と、いうように考える人が多いようです。
 とくに、会社の経営者はそう信じています。
 しかし、日本の法律は、特許を受ける権利は発明者のものです。したがって、それを譲渡しないかぎり会社のものにはなりません。譲渡には相当の対価を払うことになっています。それで、発明者を保護しています。
 これは、発明者が社長や専務であっても同じことです。一般の社員にも広く知らせる必要があります。
 多くの社員は、カイゼンや提案制度、研究所などでずいぶん会社に儲けさせる提案をしながら、報いられていない人が多いようです。
 従業者(役員や社員)が、職務に属する分野の新しい作品を考えたときは、使用者にはその通常実施権があります(特許法第35条)。
 職務発明以外の分野の新しい作品を考えたときは、それは従業員の個人のものであって、社内規程などでそれを否定したものがあっても、それは無効です。
 従業者が職務発明をして、それを使用者に譲渡したときは、使用者は相当の対価を支払うことが必要です。
 その対価の額は、利益の額や、使用者が使った程度を考えてさだめなければならない(使用者とは法人または国や公共団体、従業者とは、法人の役員、社員、公務員など)と書かれています。
このように発明者を優遇しているわけです。


1日目  「産業財産権(工業所有権)とは何か」
2日目  「“発明”とは何か」
3日目  「先発明主義・先願主義・先使用権」
4日目  「同じ日に同じ内容の作品が出願されたら」
5日目  「産業財産権(工業所有権)と著作権との違いは」
6日目  「産業財産権(工業所有権)の保護の対象は」
7日目  「ゲームの遊び方(ルール)は特許?」
8日目  「新規性・進歩性の意味は」
9日目  「先願(先行技術)調査が必要か」
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11日目  「権利がおよぶのはどこまでか」
12日目  「実施権にはどんな種類があるのか」
13日目  「特許を出願をするときに、試作品も添付するのか」
14日目  「出願審査請求書は、いつ提出するのか」