連載 8
元気がいちばん・中本流発明道場
発明配達人 中本 繁実


↓ メモと落書きがアイデア成功の早道 ↓

 私は、23年間で約7万件のアイデアやデザインの売り込みや商品化の指導をしました。
 だからというわけではありませんが、その指導にはある程度の自信をもっています。
 では、どうすれば簡単に名案を生み出せるのでしょうか?
 それには、まず最初にメモを取ることです。思いついたことを書くことです。
 アイデアで成功する人は、いつも大・小にかかわらずメモを取っています。最初は自己流でいいですから「アイデア手帳」を作ってください。
 それをいつもポケットにしまっておいて、これは、と思ったことや他の人(第三者)のちょっといい話、新聞、雑誌などで参考になった記事、テレビ、ラジオで耳にしたこと、何でも結構ですから書いておくことです。
 手帳が手元になければ、箸袋の裏や名刺の余白部分に書くのもいいでしょう。
 何気ない会話のメモが提案文となり、その提案がアイデアを買う会社の担当者、会社のときは上司を動かしそれに専門家の研究者が参加して商品になっていきます。
 どんなヒット商品でも、最初は、メモがきっかけになることは多いようです。
 だから、メモを取りなさいと指導するのです。文章をつくるのもメモが大事です。提案者の手帳を見ると、そのメモ自体が上手な提案文になっているケースが多いです。
 そこで、私は、文章が上手になりたい、と思う人たちには、まず“メモを取りなさい”と、口グセのようにいっています。
 文章を書くということは、まずメモを取ることからスタートするのです。思いつくことをとにかく何でも書きとめるのです。
 それくらいのことなら誰にでもできると思います。
 たとえば、家計簿の余白部分にちょっとした感想やアイデアを書いておくことがあるでしょう。それでいいのです。
 学生のころを思い出してください。
 学校でノート等に先生の似顔絵を描いて、そこに一言コメントをつけて、回覧してクスクスと思い出し笑いをしたことがあるでしょう。
 その一言が、立派な文章だったのです。
 手を動かしていると、次第に脳が活発になります。
 そのためにも、手にペンをもって考えることが大切です。
 メモを見ていると、連続的に別のイメージやアイデアが浮かびます。それをすかさず書きとめると考えがつながって深まっていくこともあるし予測をしない方向へと飛躍することもあります。
 あまり価値がなさそうだなーと、そのとき、思ったことでも、一応書きとめておくことです。
あとで、思わぬ重要な意味をもつからです。これをずっと続けていると、いつのまにか、文章も自然に上手になっているのです。

● 他の人に真似されるような創作が大切
 自分で創作したものは最高だ! と思うのは、誰でも同じです。
 そんな発明天狗が私の周りにもいっぱいいます。
 私の彼女(彼)は最高だ! と思うのと同じです。
 失礼……。
 そのつぎに考えることは、「このアイデアが盗用されたら大変です」、「真似されたら困ります」……、という被害者意識です。
 そこで、私は、何もいえずに困ってしまいます。それは、まだ、準備を何もしていないのに、すぐに、プロに依頼して、30万円、50万円も使って、急いで特許庁に出願することです。
 著作権(権利は自然発生)のときでも、そうです。
 ポスターに絵を描いたパンダの人気にあやかって、ぬいぐるみを作りました、それに子どものパンダをおんぶさせた……。
 これは素晴らしい作品です。盗用されたら大変だ! だから1日も早く意匠に出願したいです。いや著作権にして証明してもらいたいのです。
 雑誌や新聞のコラムの欄に記事を投稿すればしたで、もう雑誌に掲載が決まったような気がします。
 こうした感情は、アマチュアのアイデアマンの人には、共通していえることです。
このように、経験の浅い人ほど、自分に惚れ込む度合いが強いのも仕方がないことかも知れません。
 自分を信じられるくらい幸せなことはありません。
前進というのは、自分を信じるからできるのです。
 自分のアイデアが盗用されたり真似されたりしないのか、と恐れるのは、それだけ自分に自信があるわけで、そう思うことは大切なことです。
 しかし、自分の作品がどれだけのものか、自分で売り込んでみることによって初めてわかるのです。
 その結果が、誰も買ってくれません。
 見向きもしてくれません。
 鼻の先であしらわれました。
 このように、いったん、自分の作品に対する第三者の考え方、見方を知ると、がっかりしてしまうものです。
 でも、ここでくじけては、ダメです。成功する発明家にはなれません。たいていの人は、作品の改良を試してみます。
 ところが、たった一度のカイゼン、努力で、これで完全だ、と自分で思ってしまうのです。
 そこで、また自慢します。これで完全だ?! しかし、人生は、自分の思うとおりには、うまくいかないものです。
 ここで、めげてはダメです。また、考え直して、自信をもって自慢します。こうして、自信を何度も味わうことが大切なのです。
 そして、大きく成長していくのです。成功アイデアへと近づいていくのです。
 一般的にみて、15件〜20件ぐらい権利を取って、その中の、一つぐらいが当たるというのが普通です。
 エジソンや松下幸之助でも当たったのは、10件〜12件目ぐらいだったといわれています。
 ところが、たいていの人は、5件〜6件ぐらいまでは続けますが、うまくいかないと、その後が続かないのです。それで、簡単にあきらめて「私には、アイデアの才能がないのだ」と、勝手に思い込んでしまうのです。
 しかし、ここが発明家として、第一の壁なのです。
 人から真似られるものができるまで、10回以上は、やってみることです。しくじっても、企業に相手にされなくても、うぬぼれ心を奮い起こすことです。
「真似されたら困ります」と、いうのができるまで、頑張りとおす強い意思が必要です。

● 100点満点のアイデアはない
 アイデアの勉強をはじめて、2年も3年もたつのに、まだ事業化(商品化)できません、となげく発明家がいます。
 それは、なぜでしょうか?
 一言でいえば「アイデアを考えることには、力を入れますが、売り込みには、時間とエネルギーを使わない、力を入れない」と、いうことです。
 このようなことは、発明家特有の気質によるものです。そのアイデアが飛び抜けたもので、しかも、すぐ、儲かるというものでしたら、数人に見てもらえば、すぐにスポンサーは見つかるでしょう。
 しかし、そんな100点満点のアイデアなんてあるはずがないのです。
 良くて90点です。それもきわめて少ないです。
 たいてい、60点から75点、良くて85点といったものばかりです。
 それが、普通のことです。
 そうすると、1人や2人の社長さんに見てもらったくらいでは、スポンサーが見つかるはずがないのです。
少なくとも20人〜30人の社長さんに見てもらってください。
そして、ほれてくれる社長さんに出会うまで捜さなくてはならないのです。
 ところが、アイデアを求める会社の社長さんの方は、個性がまちまちで強いです。しかも多様化しています。
 これは、自分が85点以上です、と思っていても、社長さんによって60点くらいにしか、採点してくれないときもあります。
 あるいは、自分では、60点くらいかな、と思っていても、社長さんの中には、一部分が気に入って、心を動かす人がいるかも知れません。
 丸顔が好きな人もいれば、細長の顔がいい、という人もいるのと同じです。
 しかし、相当に気に入ってくれたとしても、採用して商品化するとなると、事業化(商品化)するまでには少なくても、1,000万円の単位の開発費用が必要です。
すると、社長さんの方でも、なかなか採用に踏み切れないのが実情です。
 早く成功するコツは、
 @ 売れすじ商品、人気商品に関連したアイデアを考えることです。
   まったく、新しい商品より、改良アイデアの方が簡単です。
 A 流通のしくみを知り、専門メーカーをねらうといいでしょう。
 B いまは「実用性」だけでは売れません。
 C 「かわいい」、「簡単」、「買いやすい」“3K”がそろった商品が売れます。

★ 参考文献として、拙著「発明のすすめ(勉誠出版)」、「発明に恋して一攫千金(はまの出版)」、「はじめて学ぶ知的所有権(工学図書)」をご紹介しておきます。


連載 1  不景気(?)なんてグチッテはダメ、元気な発明家をめざそう
連載 2  成功アイデアの秘訣は、人のため世のために考えること
連載 3  まず、アイデアの目標を立てよう
連載 4  発明学校に参加しよう
連載 5  テーマの選び方が「及第発明」か「落第発明」のわかれ道
連載 6  あなたのアイデアは、私「知的財産権」が守る
連載 7  特許は発明を、意匠はデザインを保護する
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連載 9  アイデアやデザインは、すぐに特許や意匠に出願すべきか
連載 10  初心者は、とにかく、出願を急いではダメ
連載 11  目標“商品化”を実現するために、何をすればいいのか
連載 12  そして、一気に売り込んでみよう