連載 10
元気がいちばん・中本流発明道場
発明配達人 中本 繁実


↓ 初心者は、とにかく、出願を急いではダメ ↓

 出願を急いではダメだ! ということは、誰でも、イメージ的には、理解していると思います。
 ところが、アイデアの勉強をスタートしたばかりの初心者が1番気にすることは、「日本は、先願(せんがん)主義です。ですから、出願が1日でも遅れると、もう他の人(第三者)のもの(権利)になってしまうのでしょう、そうなってしまったとき、私のアイデアは、どうなるんですか?」と考え、悩んでしまうことです。
 そのアイデアが“未完成”だろうと“思いつき”だろうが、本人には、関係ないことです。とにかく、出願を急ぎたいのです。
「だから、1日も早く出願できるんだったら、プロに頼んで、約30万円〜50万円かかったとしても、しょうがないですよ。初期の投資ですよ。このアイデアは、きっと近い将来、数100万円いや数1,000万円儲かりますから……」と簡単に答える人がいます。 しかし、リスクが大きすぎます。
 そのような状況の中で、それでも、出願したいときは、自分で書くことです。すると、特許の出願手数料(諸定額の特許印紙代)だけで出願できます。願書を書くのは、やさしく、楽しいものです。
 だから、出願書類は自分で書いてください。過去の統計や特許庁に出願しているアイデアをみれば、儲かるアイデアは、1,000に3つくらいです。
 あとの997は、迷案、珍案、愚案?「ウッ」がつくものばかりなんですよ。本当に、商品化できそうもないものばかりです。
 それが、発明貧乏・出願貧乏のはじまりだ、といわれる理由です。
 だから、冷静になることが大切になるのです。
 そうすれば、高ぶった気持ちが落ちついたとき、こんなはずじゃなかったのに、と後悔することがないのです。
 そこで、本誌を読んでいるあなたに、こっそり教えたいのです。
お金と時間のムダ使いだけはしないようにお願いしたいのです。
 だって、いま、あなたが1日も早く出願したい、と思っているアイデアも、23年間で約7万件のアイデアを指導した、私の体験からいえることは、そう簡単に、会社に採用してもらえないのです。ゴメンナサイ。
 でも、それが、現実の世界でもあるのです。その理由は、以前に同じ内容のアイデアがあったケースが圧倒的に多いからです。
 発明家で、超有名な笹沼喜美賀さんのアイデア「洗濯機の糸くずとり具」だって、商品化に成功したのは、20数件目のアイデアだったと聞いています。
 だから、アイデアの勉強をスタートして、最初のころに創作した数件のアイデアは、商品化にならないケースが圧倒的に多いのです。
 したがって、急いではダメです。出願費用をムダにするだけです。
 それだけ、お金に余裕があれば、アイデアの完成度を高めるために、試作費や実験費に使ってください。
 でも、ちょっとまってください。中本先生は「発明は誰にでもできる」と、いったじゃないですか、それでは、話が少し違いますよ、と叱られそうです。
 ところが、それは「歌は誰にでも歌える」ということと同じなのです。「カラオケ」のファンは、たくさんいます。
 ただ「プロの歌手になれる人は少ない」ということです。
 プロになるには、大変な努力が必要です。そんなにあまいものではありません。
 まず、たくさんのアイデアの数を出すことです。
 その中で友人に聞いたり、各地の発明学校で発表したり、自分でも判断して、これなら! と思うものを選択して、それを、特許庁に出願することです。
 過去の1年間の特許の出願件数を調べてみると約40万件です。
 その中で権利が取れるのが約4割です。
 みなさんは、本当にいい選択をしてください。
 アイデアを完成させるまでに注意してほしいことがあります。
 それは、自分の思いつきを、どこにでも行って、ポイポイと話してはダメです。
 それが、数年たったころ、ポッカリとデパートで顔を出すことだってあります。
 そのとき「しまった!」と思っても、もう遅いのです。
 そこで、人に話したり、手紙を出すときは、かならず「これは、私の知的財産権です。これは特許出願中(PAT.P)です。」とつけ加えておきましょう。そうすると、先方がほしいときは、相談にきます。
 そのときになって、特許庁に出願しても、決して、遅いことはないのです。
 それまでに、出願書類の下書きを作り、そのアイデアを商品化してもらえるように完成度を高めておきましょう。

★ 参考文献として、拙著「発明のすすめ(勉誠出版)」、「発明に恋して一攫千金(はまの出版)」、「はじめて学ぶ知的所有権(工学図書)」をご紹介しておきます。


連載 1  不景気(?)なんてグチッテはダメ、元気な発明家をめざそう
連載 2  成功アイデアの秘訣は、人のため世のために考えること
連載 3  まず、アイデアの目標を立てよう
連載 4  発明学校に参加しよう
連載 5  テーマの選び方が「及第発明」か「落第発明」のわかれ道
連載 6  あなたのアイデアは、私「知的財産権」が守る
連載 7  特許は発明を、意匠はデザインを保護する
連載 8  メモと落書きがアイデア成功の早道
連載 9  アイデアやデザインは、すぐに特許や意匠に出願すべきか
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連載 11  目標“商品化”を実現するために、何をすればいいのか
連載 12  そして、一気に売り込んでみよう