連載 7
元気がいちばん・中本流発明道場
発明配達人 中本 繁実


↓ 特許は発明を、意匠はデザインを保護する ↓

 ここで、特許や意匠の権利を取れば大きな利益がえられます、ということをのべてみましょう。
 まず、特許というのは発明のことです。
 パソコン(コンピュータ)もテレビも自動焦点カメラも“特許の魂”だということがいえます。
 これらは、技術的にもハイレベルです。
 ところが、すべての特許がそういうものばかりではありません。
 生活用品などの、身近な発明・アイデアで大きく儲けている例もあります。
 たとえば、「雪見だいふく」という人気商品があります。
 この発明のきっかけは、ある年の夏とても寒くて、アイスクリームが売れなかったときがあったそうです。
 材料が残ってしまい在庫の山です。
 それで、担当者は困ってしまったのです。
 そのとき、何かこの問題をうまく解決できないだろうか?
 ……、と考えて「それでは、もちの中のアンを取り出してそのかわりにアイスクリームを入れてみてはどうか?」と思いついたことがキッカケです。
 もちろん、特許に出願しました。
 それからです。アイスクリームを年中食べる人が増えました。
「雪見だいふく」は、問題のうまい解決方法が見つかったから食べてもうまいですよねー。
 きっと、もちの中のアンを取り出す案(アン)が良かったのです。
 そのおかげで、売り上げがいまでも年に約70億円だそうです。
まさにドル箱商品です。
 このようなうらやましい話は何も会社だけではありません。
 (社)発明学会の会員で発明家で超有名な笹沼喜美賀さんは「洗濯機の糸くず取り具」を考えました。
 そして、2件特許を取りました。
 その結果、ロイヤリティ(特許の実施料)が約2億7千万円です。
 特許という知的財産権のおかげです。
 ここで、あなたの月給や年俸と比較してみてください。
“すごい”ことがわかるでしょう。
 このように、技術的な創作であれば、特許に出願できます。
 特許の権利(独占権)も取れます。
 その結果、20年間保護してもらえます。
 このことを特許権といいます。

 意匠は、デザインのことです。
物品の形状とか色彩とか模様などのデザインのことです。
 デザインがそのまま著作権になるわけではありません。
 ところが、著作権のことを良く理解している人や知っている人がいまのところ企業の中では少ないようです。
 そのため、デザインを意匠に出願している方が高く売れるのです。
 そうでないものは、安いということになってしまいます。
この特許と意匠は「思想の創作」で、容易に創作できないものに与えられる知的財産権です。

 さて、ここに問題点があります。
 これらの権利を取得するためには、時間とお金がかかります。
 出願費用や登録料に約10万円の費用がかかります。
 そのうえ、権利が取れるまでに時間もかかります。
 それも、数年はかかります。
 せっかく、意匠に出願しても、その間にデザインをマネさられてしまって、もしもですよ、それを安売りでもされたら、創作者は泣くに泣けませんよねー。
 そこで、意匠の出願をする人たちの間で、一つの自衛策として著作権(権利は自然発生)を活用する人がふえてきたのです。
 ただ、ここで大事な点は、その意匠が社会的なニーズがあるか、どうかということです。
 いくら自分の権利が発生してもそれに対するニーズがなければ誰も買ってはくれません。製品にしても、誰も使ってくれないでしょう。
 しかし、その人が社会的なニーズの対象となるデザインを創作したとき、そこに創作者の権利が存在しなければ大変なことだということです。

★ 参考文献として、拙著「発明のすすめ(勉誠出版)」、「発明に恋して一攫千金(はまの出版)」、「はじめて学ぶ知的所有権(工学図書)」をご紹介しておきます。


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