知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 8
著作権という知的財産権
「オセロゲーム」はなし

 子どもから大人まで世界各地で親しまれている『オセロゲーム』は、元中外製薬(株)のセールスマン、長谷川五郎さん(岡山県)が創作したものです。
 薬の売り上げを増やすためには、医者と碁をうつ時間を短くすることだ! と考えた長谷川さん。牛乳ビンのフタに墨をぬって「相手の石をはさんだら自分の石の色にかえる」
……、といぅた作品を考えました。源平碁がヒントになったそうです。
 「ゲームのルールは、タテ、ヨコに8コマずつ計64コマを白と黒のコマで埋めて、最後にどちらの色のコマの数が多いかで、勝ち負けを決める」と、いった具合に、ゲームのルールはきわめて単純です。この遊戯具の遊び方の説明書(ルールブック)の印刷物が著作権です。
 それでいて、やっているとつい夢中にさせる知的なゲームです。
この「オセロゲーム」を見出して売出し、ブームを演出したのは(株)ツクダオリジナル(東京都台東区)です。
 発売時の昭和49年には、約180万個、翌年50年には、約280万個を売り上げました。熱狂的なブームが去ったいまも、年間70万個〜80万個をコンスタントに売り上げるロングセラーのヒット商品になっています。創作者の長谷川さんはすでに2億円以上のロイヤリティをもらっているそうです。

 ◆遊び方やルールは著作権である
 遊戯具の遊び方やルールの説明書の印刷物は、特許の権利ではなく、著作権です。
 たとえば、新しい野球盤を作って売るときは、遊び方やルールを説明した説明書(ルールブック)の印刷物が必要になります。
「バットで打った球がランナーにあたったらアウトだが、溝の中に入ったときは2塁打で、穴の中に入ったらホームランです」と、いうようなことを書いてある説明書です。
この説明書の印刷物が著作権です。
特許の権利を取るとすれば、そのような遊び方やルールを実現させるところの野球盤の「物品の構造(しくみ)」で、取ることです。
 参考までに、数学または論理学上の法則(計算方法、作図法、暗号の作成方法)人為的な取り決め(遊戯方法、保険制度)、心理方法(広告方法)などは一般的に自然法則ではないとして特許を受けることはできません。


連載・1  あなたの作品は5つの権利で守られる
連載・2  知的財産権って何?
連載・3  特許という知的財産権「雪見だいふく」のはなし
連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
連載・7  商標という知的財産権「タフマン」はなし
   ↓    ↓    ↓    ↓    ↓    ↓
連載・9  発明学校に参加しよう
連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
連載・12  先願主義だからといって、出願を急いではいけない