知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 1
あなたの作品は5つの権利で守られる

 新しい作品が完成したとき、その作品が、特許という知的財産権になるのか? 意匠という知的財産権になるのか? 著作権という知的財産権になるのか? 初心者には、それを、どうすればいいのか、わからないと思います。
 それがわかっていただけるように、これから説明していきましょう。
権利の種類や内容、権利の取り方などを一緒に勉強しませんか。
ところで、発明品というと、“発明”とか“特許”とか“パテント”とか、一般的にはいわれています。
正式には「知的財産権〔産業財産権(工業所有権)+著作権〕」といいます。
 産業財産権とは、一体どんな権利なのでしょう。簡単に説明すると、つぎのような内容です。
@ 発明とか考案の保護制度です。
A 具体的には、産業財産権とは、特許(権利期間:出願の日から20年)、実用新案(権利期間:出願の日から6年)、意匠(権利期間:設定登録の日から15年)、商標(権利期間:設定登録の日から10年・更新可)、という別々の法律で定められたものの総称です。
それぞれ、法律の内容は、
@ 何が保護の対象になるのか。
A どのような手続きで登録になるのか。
B 権利の内容はどういうものか。
……と、いったことを決めています。
会社や学校の規則みたいなものです。
 たとえば、特許(発明)の対象は「物の発明」と「方法の発明」です。
台所用品や事務用品のような生活用品から、新しい素材、新しい食物や植物などが対象で、分野は幅広いです。
しかし、権利が取れるためには、新規性(新しさ)と進歩性(困難さ)が要求されます。
 実用新案(考案)は、物品の形状、構造、または組み合わせに関するものに限られています。
すなわち、機械、器具、日用雑貨品のように一定の形があるものが対象です。
 したがって、物品でない製造方法などは含まれません。
 意匠は、物品の形状、模様、色彩、物品の外観で、美感のあるものが対象です。
権利が取れるためには、新規性と創作性が要求されます。
 商標は、商品や役務(サービス)に使用するマークです。
文字、図形、記号、立体的形状など、他の人(第三者)の商品や役務と区別することができる顕著性を備えているものが対象です。
これは、特許、実用新案、意匠と異なり、有用なものを考えたというのでなく、商品や役務を区別する目印になるマークを登録するので、新規性がなくても登録されます。
 著作権とは、思想感情の表現の保護で、一般には出願、審査、登録という手続きはとられていません。
印刷して公表されたときに、著作権は、自然に発生するからです。
 ゲームのルール(遊び方の説明書の印刷物)とか、歌の曲とか、絵などは、著作権です。
 小説も学術文も美術品も音楽も落語もみんな著作権です。


   ↓    ↓    ↓    ↓    ↓    ↓
連載・2  知的財産権って何?
連載・3  特許という知的財産権「雪見だいふく」のはなし
連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
連載・7  商標という知的財産権「タフマン」はなし
連載・8  著作権という知的財産権「オセロゲーム」はなし
連載・9  発明学校に参加しよう
連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
連載・12  先願主義だからといって、出願を急いではいけない