知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 2
知的財産権って何?

 夢がある知的財産権とは何ですか? なぜ、身近なのですか? なぜ、大切なのですか? これから紹介していきましょう。その意味がわかっていただけると思います。
 たとえば、ロッテの社員が、餅の中にアイスクリームを入れた「雪見だいふく」を創作しました。
それが、年約70億円も売れています。
これは「特許という知的財産権」です。
 笹沼さんは、洗濯機でワイシャツや下着などを洗ったとき、衣類から出る糸くずや綿ぼこりなどを自動的に取り除くための「洗濯機の糸くず取り具」を創作しました。
この作品で笹沼さんは、3億円近いロイヤリティ(特許の実資料)をもらいました。
これは「特許という知的財産権」です。
赤ちゃんの後頭部が扁平にならないように「ドーナツ型の枕」を作ると、それが話題になり、良く売れました。
これは「実用新案という知的財産権」です。
 また「ハート型のバケツ」を考えると、女子高生や新婚さんにウケました。それで、良く売れました。
これは「意匠(デザイン)という知的財産権」です。
 清涼飲料に“タフマン”という名前(ネーミング)を付けたら、サラリーマンにウケました。それで、良く売れました。
これは「商標という知的財産権」です。
オセロゲームには、遊び方やルールを説明した説明書(ルールブック)の印刷物やパンフレットの印刷物が商品に付いています。
この説明書やパンフレットなどの印刷物は「著作権という知的財産権」です。
 このように、知的財産権というのは非常に身近なものなのです。したがって、誰でも年にたくさんの権利を取っています。いま、それを自覚していないだけのことです。
 ところが、知的財産権をコンピューターのソフト(プログラム)やハード(集積回路)と思って、自分には縁遠いと考えている人が意外に多いのです。
ここを読むと、その考え方が間違っていたことがわかっていただけると思います。
 だから、私の講演や大学の講義のほとんどが事例中心です。そして、あー、そうか、そうか、といっていただけるようになると思います。
 ちなみに、産業財産権(工業所有権)は、発明(技術的思想の創作)などを保護する制度です。
 著作権は、文芸、学術、美術、音楽など、文化的なものを守る法律です。
思想感情の表現を保護する制度です。
知的財産権は、この2つ「産業財産権+著作権」を合わせたものです。
 著作権は、出願、審査、登録という手続きが取られていません。印刷して公表されたときに、自然に著作権が発生するからです。
登録主義と無登録主義の違いです。
しかも、著作権は、本人の死後50年間も保護してくれます。


連載・1  あなたの作品は5つの権利で守られる
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連載・3  特許という知的財産権「雪見だいふく」のはなし
連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
連載・7  商標という知的財産権「タフマン」はなし
連載・8  著作権という知的財産権「オセロゲーム」はなし
連載・9  発明学校に参加しよう
連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
連載・12  先願主義だからといって、出願を急いではいけない