知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 3
特許という知的財産権
「雪見だいふく」のはなし

 年商約70億円といわれる「雪見だいふく」は(株)ロッテ(東京都新宿区)の社員の逆転の発想から生まれた作品です。
 「ある年の冷夏に、アイスクリームが売れなくて材料がたくさん残ってしまい困ったのです」そこから出発した作品が「1年中、食べられるアイスクリームはできないか? と、いった問題となり、その解決方法がだいふく餅の中のアンを取り出して、そのかわりにアイスクリームを入れたらどうか?」と、いった案になったのです。
 試作品を作って食べてみると、なかなかうまいのです。この作品が大ヒットになったのです。したがって、この「雪見だいふく」と、同じような作品が大手企業から続々と生まれました。
 まさか、餅の中にアイスクリームを入れたものが特許になるとは思わなかったから各社が手を出したともいえると思います。ところが、それよりも「雪見だいふく」があまり良く売れるから、だまってみていられなかったのが真相でしょう。
 ところが、(株)ロッテでは、これが特許になると判断して、昭和56年「被ふく冷菓とその製造方法」と、いう名前「発明の名称」で出願し、58年に権利が取れました。
 権利が取れると強いです。そのため各社が作っていた類似品は影をひそめましたが“雪見だいふく”だけはいまも日本中で売れているのです。

 ◆発明の種類
 発明には「物の発明」と「方法の発明」があります。
 物の発明は、機械、器具、構築物、日曜雑貨品、合金、化学物質、液体、食品などの有形の物があります。
 方法の発明は、化学物質や液体、合金などの製造方法、電気や光、熱の発生方法、さらに測定方法や検査方法が含まれます。特許の権利期間は、出願の日から20年間です。
 では、ここで、発明でないものを紹介しましょう。
永久運動、欧文文字、数字、記号を適当に組み合わせて電報用の暗号を作成する方法、電柱に広告効果を大ならしめるように拘止具による広告の方法、生命保険の方法、玩具を使った遊び方などです。


連載・1  あなたの作品は5つの権利で守られる
連載・2  知的財産権って何?
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連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
連載・7  商標という知的財産権「タフマン」はなし
連載・8  著作権という知的財産権「オセロゲーム」はなし
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連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
連載・12  先願主義だからといって、出願を急いではいけない