知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 7
商標という知的財産権「タフマン」はなし

 「オロナミンC」や「ポカリスエット」など、健康飲料は花盛りです。ところが、成分はどの商品も似ています。だから、商品の売れ行きのポイントは、商品名(ネーミング)です。
 印象がいい名前(ネーミング)を付けると、同じような他の会社の商品の5倍も10倍も売れるのです。中堅企業で高田製薬(埼玉県)という会社があます。社長さんがとても発明好きで、特許実務者を養成し、カイゼンや提案活動の中から生まれた社員の作品を積極的に活用している会社です。また、社員の創造力の養成は大事だからといって、健康飲料などのネーミングの付け方にも力を入れています。
 その提案の中に、うちの社長はタフだから、それを飲むとタフになるという意味を込めた「タフマン」と、いうネーミングがあったのです。これは面白いネーミングだ! ということで、商標に出願したら権利が取れました。それが公報に載ったら、ヤクルトが、ぜひ当社の商品(健康飲料)に「タフマン」という名称を使いたいので、売っていただきたい、といってきたのです。それも、1,000万円で? 高田製薬は、びっくり! したのです。
 そこで、高田製薬は商標「“タフマン”の名称は、無料で使ってください。そのかわり、健康飲料の製造は当社にまかせてせてください」と、ヤクルトに提案したのです。
 それが、いま、テレビなどのCMでおなじみの「タフマン」です。

 ◆商標とは何?
 商標というのは、商品や役務(サービス)に付ける名前や目印です。
 その名前や目印を、特許庁に出願すると一定の条件で権利が取れて、独占(設定登録の日から10年間、更新可)できることになっています。それが商標です。
 たとえば“SONY”といえば、電気器具に付いている名前です。
 つまり、商標である。“オセロ”といえば、ゲーム具に付いている名前です。
 “ごはんですよ”といえば、桃屋がノリの佃煮に付けけた名前です。
 みんな、商標です。他の人(第三者〕は、それを、無断で使えないのです。
 最近の商品は、技術もデザインも良くできています。そのうえ、洪水のようにたくさんの商品がならんでいます。そのとき、消費者は、その中から商品を選ぶのです。
 機能もいい、デザインもいい、すると、最終的に、選ぶときのポイントになるのが商品のネーミングです。
したがって、各企業は、ネーミングを非常に重要視するのです。


連載・1  あなたの作品は5つの権利で守られる
連載・2  知的財産権って何?
連載・3  特許という知的財産権「雪見だいふく」のはなし
連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
   ↓    ↓    ↓    ↓    ↓    ↓
連載・8  著作権という知的財産権「オセロゲーム」はなし
連載・9  発明学校に参加しよう
連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
連載・12  先願主義だからといって、出願を急いではいけない