知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 12
先願主義だからといって、
出願を急いではいけない

 「先に出願した人を発明者・先願主義」と「先に発明した人を発明者・先発明主義」は、国々によって多少違っています。
 日本は「先願主義」です。米国は「先発明主義」です。 ここで、大切になるのが作品を創作したときの内容と日付(○年○月○日)です。
新しい製品を作るとき、創作したものをすぐ、特許などに出願することはしません。
そういうときは、まず、企画書を作ります。その企画書に基づいて、おおざっぱな設計図(説明図)を描くことからスタートします。
 作品が完成するまでのプロセスは恋愛と良く似ています。
恋愛にたとえていうならば、創作した時点は、スタートラインです。商品化の準備です。そして、試作品を作り、テストをして、使いやすさや効能を確認します。まずければ、さらに改良を加えます。
 それは、デートして、お互いの考え方を確認するようなものです。
そして、試作品を作って、テストをして、各種データを何度も取って確認をします。
それで、「これならいける、商品を作っても大丈夫!」と、いうときに、特許などの出願をするのが一般的です。
 個人の創作活動でも、会社の商品開発も同じです。
 何回もデートして、お互いの、将来の夢、考え方が一致すれば、この人なら大丈夫……。結婚しよう、という気持ちにもなるハズです。恋愛だって最初から背伸びして、ムリなお金を使うと長続きはしないと思います。
そんなことをしていたら、恋愛貧乏になってしまいます。
 このように、作品の着想から、商品化のメドがつかめる(完成する)までに長期間を要するケースも多いようです。
その間に、他の人(企業の場合は、同業者)に、先に権利を取られてしまうケースだってあります。可能性としては大です。そこで、日付(○年○月○日)に、創作しました、といえるように、創作活動の事実を随時残しておくことです。
そうしておかないと、先に使用する権利(先使用権)があるのに、新しい商品を作れなくなってしまうこともあります。そんなことになったら、大変です。
その結果、研究費のムダ、人件費をムダにしてしまうのであるのです。


連載・1  あなたの作品は5つの権利で守られる
連載・2  知的財産権って何?
連載・3  特許という知的財産権「雪見だいふく」のはなし
連載・4  特許という知的財産権「洗濯機の糸くず取り具」のはなし
連載・5  実用新案という知的財産権「ドーナツ形の枕」のはなし
連載・6  意匠という知的財産権「ハート形のバケツ」のはなし
連載・7  商標という知的財産権「タフマン」はなし
連載・8  著作権という知的財産権「オセロゲーム」はなし
連載・9  発明学校に参加しよう
連載・10  知的財産権を取ろう
連載・11  発明コンクールに応募しよう
終わり  現在表示されているページです