知的財産権入門講座
講 師 : 中 本 繁 実    テキスト : はじめて学ぶ知的所有権(工学図書刊)


連載 4
特許という知的財産権
「洗濯機の糸くず取り具」のはなし

 伝説化した話で恐縮ですが、昭和43年頃の話です。東京の発明学校の作品発表に「洗濯機の糸くず取り具」と、いった作品がありました。笹沼喜美賀さん(神奈川県大和市)が創作した作品です。
 笹沼さんは、「発明学校で発表するまえに、手紙で数10社に売り込んでみました。しかし、どこの会社も、素人の発明家の私を、相手にしてくれませんでした。そこで、どこかのスポンサーのめにとまるかも知れないと思って発表しました」
 そのスポンサーになったのが(株)ダイヤコーポレーション(東京都中野区)です。その作品が “クリーニングペット”です。
発売して2年目に(株)松下電器が洗濯機に1個ずつ付けることになって、ここだけで、月に約15万個も売れることになったそうです。
 社外の作品を採用してヒット商品を生んだ好例です。その後「吸盤がはずれる」と、いった使用上の不便があったので、それを改良して空気袋を付けて浮かせるように工夫しました。それが「クリーニングボール」です。
それがブームのときは、月約5,000万円も売れるようになったのです。
 発明者の笹沼さんは、3億円近いロイヤリティ(特許の実施料)をもらったのです。
それから、(株)ダイヤコーポレーションでは、日用品の作品を好んで、商品化を実現してくれるようになりました。すると、社外の作品がたくさん集まり、洗濯用品や台所用品で新製品が続々と生まれました。
 発明者の笹沼さんは、3億円近いロイヤリティ(特許の実施料)をもらったのです。

 ◆発明とは何?
 発明という言葉を辞書でひくと「いままでになかった新しいことを考え出すこと」と、書いています。特許法では「『発明』とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」(特許法第2条)と、書いています。たとえば、石に糸を付けて、手に持って、回転させます。
その石は、中心から遠ざかろうとします、これを“遠心力”といいます。
 これは、誰が、いつ、どこでやっても同じです。これを“自然法則”といいます。
 この自然法則をうまく利用して生まれたのが、遠心分離機(脱水機)の作品です。
 水にぬれた洗濯物を、金網の中に入れて、高速回転させると、洗濯物も水も中心から遠ざかろうとします。ところが、洗濯物は、金網にさえぎられて止まりますが、水は、この網の孔から飛び出します。だから、洗濯物と水が分かれて、脱水ができるのです。


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連載・10  知的財産権を取ろう
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