ドクターQの
発明連想シリーズ

発明グラウンドの ボランティア スタッフの ドクターQ です。

さて、私は京都で長年(25年以上)発明に夢をかけています。
京都発明クラブで、昨年4月から毎月発行の会報の「発明連想」を 担当しており、まもなく一年が過ぎようとしています。
私が書きました「発明連想シリーズ」が12ヶ月分たまっているので全文を 掲載いたします。
その後は、毎月ひとつぐらいのペースですが、日頃発明に意欲を 燃やしておられる方々の少しでも参考になればと思います。
当分ニックネームとして「ドクターQ」で投稿させていただきます。 一つのタイトル毎に約500字程度で書かれています。 京都新聞に掲載された分もあります。




発 明 連 想1
手を切って思い浮かぶ
2002/04/16(日)
発明の原点は、「不便だと感じたらその不を取ることをすることである」とこの道の先輩に教わった。不便、不自由、不愉快、・・・世の中には、まだ沢山の不がある。先日、私は自分の不注意から手を切ってしまった。自作の透明アクリル製のナイフを拭いている内に指を切ってしまったのである。「まさか、プラスチックで指の皮膚が切れるなんて」と思った。しかしよく考えれば「手が切れる様な札束を握る」なんてうれしい表現もあるし、紙で手を切った経験もある。同時多発テロ事件もハイジャックが容易に行われたということから、機内食でのナイフなども凶器になるといわれる。そこで、金属製のものから変えてプラスチックでの機内食用のナイフを考えた。夕食の肉や野菜などを試し切りした。良く切れる。だからといって殺傷能力はないだろう。こんなものが普及するかもしれない。いやもう普及しているのかもしれない。こんなものは部材を変えただけなので特許にはならないだろう。多量に安く作る技術が勝負だ。しかし、レントゲン装置を容易に通り抜けるので発見が困難となる。発明は常に諸刃の剣の危険な要素を含んでいる。




発 明 連 想 2
木を切って思い浮かぶ
2002/05/15(日)
庭の柿の木を切った。伸びすぎてたのが気になっていて剪定作業をした。少し可哀想な気持ちになるが、思い切って上部3分の1程度の枝を間引いた。人間の散髪などは本人も気持ち良くさっぱりとなったと思うのだが、生き物である木の枝となるとどこかにやはりごめんねという気持ちを持ちながら鋸をいれる。このように剪定をすると、果実の数は減るが一つずつの大きさが大きくなって良い品質のものを収穫できる。自然世界の仕組みは本当に良くできている。発明品でもそうだと思う。色々考えついてあれもこれもと途中まで作り未完成品で残る。しかし時期が来たら適当に間引いて、残す発明と捨てる発明の区別をつけねばならない。捨てようと決心した発明品は、思い切って資料の一切を捨ててしまうことが大切だと思う。そうすることが残されたものの品質を高めるコツであると感じる。




発 明 連 想 3
縁 の 大 切 さ
2002/06/11(日)
「縁」は不思議なものだ。どのような切っ掛けでその縁が始まるのか全くわからない。しかし、縁を続けるかどうかはその人の自由である。愛する人、愛する組織、愛する趣味、愛する物などを観察すれば、その後も続くものには続くだけの理由がある。 発明の会との縁ももう随分と長い。様々な方々と出会い、発明の楽しみも憶えた。その間に発明らしき物も沢山できた。どうしてそのような物を作り始めたのか。今思うとその切っ掛けは様々で、相手の要望に応えて始めた物、自ら不便を感じて始めた物、何か転用できないかと思い始めた物などが多い。 だが、売れる物になるかどうかは非常に難しい問題だ。売れるには売れるだけの理由がある。市場規模、量産方法、価格決定、流通選択、デザイン、意見収集市場調査、広告方法など課題は山積みとなる。しかし、今後もこの「希望の夢」を見させてくれる発明の縁を続け、喜ばれるものを作りたいと思う。




発 明 連 想 4
毎度バカバカしいお話しを!
2002-07/16(日)
「バカのように暑い夏」と言えば、「バカモン夏は暑いのに決まっとる!」と言う人もある。「踊る阿呆」「小馬鹿にする」「親馬鹿」など人や物を評価する言葉にアホ、バカの付く言葉が沢山見つかる。だが、この言葉も地方によって言語分布がある。「あほやねー」と言われるのと「バカにつける薬はない」と言われるのとでは随分と受取方が変わる。この言語圏は電源周波数と関係するらしい。だが、タワケやフウケなど他にも色々ある。反語は「賢い」とか「頭がエエ」という言葉であるが、この言葉にも言語分布はあるのだろう。 人一倍頭がエエと思ってる方々の多い発明家集団での作品発表は、実力を試す良い機会である。発表すればエエ頭の人々の評価がいただける。「如何に常識から抜け出た馬鹿げた発想ができるか」そこが勝負である。 私自身も死ななきゃ直らない程に惚れた趣味の発明であるが、「バカに調子良さそうじゃない!」と言われるほどに一度は大儲けしたいのも人情である。




発 明 連 想 5
速度測定について
2002/08/12(日)
「ネズミトリ」とは、スピード違反取締の代名詞である。やられた人の中には何と姑息な手段でと憤慨する人もいる。取締にかかって怒る人はその前に自分の法律違反を反省すべきである。この速度測定の原理は初期には一定距離通過車両の通過秒数を実測して求めていた。 次ぎにスイッチ内蔵二線の通過時間から自動計測した。現在の主流はドップラー効果を応用したもので、進行してくる物体に発射したレーダー波の周波数と反射して帰ってきたレーダー波の周波数差を測定するのである。  この測定原理は1842年にドップラーが初めて研究した。この鼠取り応用製品のスピードガンはTV中継でお馴染みの球速測定手段となっている。   私は1995年にスイング速度測定装置を開発して新聞に載った。高校野球、プロ野球も測定した。野村監督、長島監督にも会った。松井も測定した。落合は美々ってやらなかった。まだ時代が早すぎたようだ。何でも一番好きのアメリカから数年以内に流行るだろう。




発 明 連 想 6
創造型人間倍増経済にプラス
2002/09/15(日)
発明好き人口はどの程度なのだろう。これは統計にないので推測するしかない。一年間の出願件数は2001年が439,175件で増加率0.5%。企業出願が多い。日曜発明学校などに通う会員だけが発明好きではない。発明好きだが一度も出願しない人達も多い。 発明人口の求め方に簡単な計算方法がある。日本全体のおよその特定人口を知りたい場合には、「京都府下では何人か」を割り出してその数字を50倍すればよい。京都発明クラブに所属する会員数は現在108人いる。これを50倍して全国の発明愛好家は約5,000人と推測する。また、京都の潜在的発明好きが仮に千人だとすれば、全国には5万人程度いることになる。 不況にあえぐ日本は、国家的大事業として「創造型人間倍増計画」を緊急に打ち出すことが経済効果を高めることにもなる。そのためには、有用な発明をした人への賞金付きの表彰制度などを設けて、スポーツ市場、芸能市場と同様に将来を担う子供たちに夢を与える方向での環境づくりが必要である。    (読者の欄投稿文 京都新聞掲載 8/22木)




発 明 連 想 7
便利さの中の「機器一発」
2002/10/20(日)
「007危機一髪」をご存じの方は中年に多い。この007シリーズは、イアン・フレミング(1908〜1964)が書いた小説で、英国の秘密諜報員ジェームス・ボンドが活躍する。 シリーズの中にはQ(MI6部員・秘密兵器開発担当)が開発した秘密兵器が必ず数点登場する。 私はこの発明品に目を奪われたものである。中でも携帯で電話する装置や車の操縦装置など、当時は本当かなと思われた物が今日では現実となっている。この頃の携帯電話などは、フォトメールやムービーメールなどといって写真や動画までもが送受信される時代となった。着メロという着信音楽も40和音などと贅沢な内容になっている。GPSといって人工衛星を用いて、自分の位置を地図表示してくれるサービスもある。占い、ゲーム、ニュースの配信やキャッシュサービスなどもしてくれる。この進化はどこまで続くのであろうか? 先日、トイレにうっかりして音声万歩計を落とした。携帯を落としたと考えたらぞっとした。もしも水中に落とせば、その時の状況にもよるが、運が悪ければデーターは勿論のこと、機器は一発で破壊される。正に「機器一発」である。




発 明 連 想 8
発明とセレンディピティ
2002/11/17(日)
今年は日本人のノーベル賞受賞者が二人も出た。1人はノーベル物理学賞の小柴昌俊氏76歳・東京大学名誉教授と、もう1人はノーベル化学賞の田中耕一氏 43歳・島津製作所勤務である。特に若い方の田中氏は、純朴なキャラクターが受けてTV各局で連日報道された。彼はあるインタビューにこう答えている。「特許を取るよりも仕事が面白いかどうかが重要で、面白い研究が続けられていることに満足している。」「幸い85年に会社が特許を出願して成立したので、先にやったという証しになり(今回の受賞の)役に立った。」  超新星からのニュートリノを史上初めて観測した物理学賞の小柴氏と、たんぱく質の質量分析装置を開発した化学賞の田中氏は、ともに偶然がもたらした現象を見過ごさず大発見へとつなげた。偶然がもたらす思いがけない幸運な発見をする才能をセレンディピティと呼んでいる。発明や発見の多くは、幸運の女神を微笑えます能力があるかどうかで決まる。  私は半年前からSerendipityという名称のカードゲームを開発している。偶然にも同名の恋愛映画が今秋日本にやって来たので上映を見た。「これは天からのサインだ・・・。」




発 明 連 想 9
創造と好きの関係
2002/12/15(日)
「好きこそものの上手なれ」や「下手の横好き」という言葉がある。茶道の利休百首にも「上手にはすきと器用と功積むと この三つそろふ人ぞ能くしる」とある。私はこの句が好きである。好きとか嫌いには理屈はない。 先日、四条木屋町の路上で1人でエレアコとハーモニカを演奏して歌っている人がいた。夜10時半を過ぎていた。指の悴むような中でリクエスト曲「乾杯」を熱唱してくれた。 「ガンジス、12色のクレパス、・・・・」など次々と歌い上げていく。1時間近くそこに立っていて曲の間で彼と話をした。長渕剛の曲なら300曲ほど演奏しながら歌えるそうだ。 それぞれの曲に3から5アレンジでき、1000曲ほどが即座に弾き語りできるそうだ。彼は聴衆が「上手い」などというのを喜ばない。それより「凄い」という言葉を好むという。 私もそうだ。「凄い」という喝采を浴びるために日々努力している。いや、努力なんて言葉は人がつける。 好きだからできる。やることが楽しいのだ。彼には100曲ほどのオリジナルがあるらしい。私も100品ぐらいあるといえる発明人生を送り、ミリオンセラーも出したいと思う。




発 明 連 想 10
言 葉 と 発 明
2003/01/19(日)
聖書のヨハネ伝第一章に「初めに言葉があった。・・・。万物は言葉によって成った。・・・・・」と書いてある。言葉は生活のあらゆる所に影響を与えている。日頃話している言葉をあまり意識せず使っている方も多いと思う。発明では思考や情報伝達の手段として、言葉が特に重要である。 発明とは、従来からある物や考え方に対し、新発想の言葉で創造し進化さす行為であり、発明をするにはその分野での技術用語、専門知識、技術修得などが最低限必要となる。 先日、某メーカーが発売した「バウリンガル」という犬と人間との会話装置がヒット商品となった。犬の鳴き声をマイクで取り込みコンピュータが処理して人に解る内容で表示する。こんな遊び感覚の発想が世の中を楽しくさせる。 私達人間も呻声、叫声、叱声、怒声、罵声、奇声、歓声、嬌声など特殊な声で言葉を発する場合がある。機械でも調子の善し悪しを音で判断する。傷んできた機械は様々な故障音を発生する。その音を聞き分けて傷んできた場所を知る。人類は今まで色々な物を発明してきた。殺人用具もある。しかし、言葉や発明は破壊にではなく平和に使って欲しい。     (読者の欄投稿文 京都新聞掲載 1/21火)




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